【南の国編】 41. 影絵芝居

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「ねぇ、お姉ちゃん、海外の人?」  わくわくとそう聞かれ、頷くと、女の子は弾ける笑顔を見せてくれた。 「わぁぁい、外国人! 初めてみた!」  明るい声だわ。とっても嬉しいそうね。うふふっとほっこりしたが、ふと疑問を感じた。  初めての外国人……? でも南の経済は観光収入に頼っているはずだけれど……。  あそうか、6年に及ぶ宗教戦争で観光客が途切れたんだ……。 「すげぇ! オラも初めてみたー!」  つられて男の子も興奮し出した。 「お兄ちゃんも外国人?」 「ふむ。そうだ」  ニロが肯定すると、三人はウキウキと近寄ってきた。 「髪の色も目の色もオラと違う……すげぇよ!」 「わぁあ! 本物が二人も!」 「……がいこくじん……ちゅごい」  三人にまじまじと見られて、少し後ろめたさを感じた。  これからジョセフが王になったら、きっと国は安定して再び観光客が戻ってくるはず。いまはそう信じるしかないわ。 「ふむ。余はニロ、そしてこちらはフェーだ。よろしく頼む」  フェー? ニロの自己紹介に違和感を覚えて思わず首をひねれば、 「すげぇ! フェーって聖女様の名前と似てるー!」 「いいなあお姉ちゃん! 羨ましい!」 「……うらやまちい……」  と子供たちがわあっとはしゃぎ出した。  あっ! うっかりしていたわ。  そういえば聖女として拝められているから、名前を教えたらすぐにバレてしまう。それでニロが気を利かせてフェーとだけ紹介してくれたのね。さすがだわ。 「……よろしく」  こわばる唇でそう呟くと、三人は元気よく「よろ()く!!」と返してくれた。  うっ、一応本名だけれど、何気なく子供を騙しているみたいで気が気じゃないわ……。 「ふむ。それでお前らの名は?」  平然とした顔でニロがそう問うと、一番年上の男の子は待ってましたとばかりに声を張り上げた。 「オラはリットだー! あとちょっとで7歳!」 「うっそよ、うそ! あたしと同い年でまだ6歳のくせに!」  呆れた顔の女の子にそう指摘され、リット君は不服そうに口を尖らせる。
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