【南の国編】 41. 影絵芝居

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「何言ってんだよ、ニタ! オラはニタより先に生まれたんだから同い年じゃないぞー!」 「もー! やっぱりバッカだね、リットは! 同じ年に生まれたらみんな同い年よ! 先も後もないの!」 「あるよー! だってニタはオラの従妹(いとこ)だからオラの方が年上だろー!」 「それでもリットは6歳で同い年だってばー! もー! なんでわかんないのー!」  と二人が口喧嘩を始めた傍で、飴をくれた幼い男児は両手の指を立ててなにやら真剣に数え始めた。 「ナック、……いち、……にぃ、……ちゃん?」  途中で戸惑って一人で小首を傾げた。 「ナックは先月3歳になったよ! みんなでケーキ食べたじゃん!」 「……ケーキ? ……うん、ケーキ! おいちかった!」  隣から女の子がそう教えれば、何かを思い出した男児は両手を上げて喜んだ。  えーと。上からリット君、ニタちゃんとナック君ね。うふふ。かわいいわ〜。 「そうか。ナックは3歳か。もうちとで余よりも大きくなるな」  とニロに頭を撫でられるナック君は、 「ナック、……がんばりゅ!」  そう言って嬉しそうにかかとを上げた。  あらまあ。なんて愛らしい〜。  ほんわかな気持ちになっていると、リット君の朗らかな声が聞こえてきた。 「なーなー! 海外のことを聞かせてよー!」 「ふむ。『お願いします』であろう?」  ニロにそう指摘され、「あい、お願いします!」とリット君は素直に言い直した。 「ふむ。そうだな……。海外のことか。残念だが余はあまり外出していなかった故、なにを語ればよいのか、判断に迷うな……」  たしかにニロは行事がある時以外王城から出ないものね。  一度私と町を回ったけれど、そこではこれといった珍しいものもなかったわけだし、なにを教えたらいいのかわからないわね。 「ねえ、お兄ちゃんの国に変な動物とかいる?」  悩むニロにニタちゃんは期待の眼差しを向ける。 「ふむ。奇妙な動物か……」 「ワニ……とか?」  ふと閃いて横からそう呟くと、 「ワニ?!」  間を開けずにリット君とニタちゃんが声を上げた。  まあ、息ぴったりだわ。
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