28. 食事会

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 しばらく長い廊下を歩いていると、突然足を止めて、社長が私を振りむいた。 「うん、さすがはモンナ。腕は確かだね。これで完璧だ」  完璧? と首をひねれば、社長は温厚な笑顔を浮かべて、言葉を続けた。 「いいかい、フェーリ。いま屋敷の前にいるのは、これからテワダプドルの新しい国王となる人で、名はジョセフ・オーウェルだ。よく覚えておきなさい」  テワダプドルって…… 「……南の、国?」 「うん、そうだよ。聡明な君ならわかっていると思うがね、この食事会は王国の運命が関わっている。ちゃんと考えて発言すること、いいね?」  さりげなく社長が圧力をかけてきた。  王国の運命が関わっているなら気をつけないと……って、いや、まったく意味がわからないよ、社長。  南の王がいま屋敷の前にいる? どういうこと……?  条約では西の国としか外交を持てないことになっているよね。なんだろう、私の知らない間に改善されたの……?  いや、違う。  だって王がお城ではなく、コンラッド家の屋敷にくる時点でどう考えても正式な訪問ではないもの。これは極秘の会談? まさか大事なお客様が南の王だったとは……。でもそうか、だからニロがいるのか、なるほど。  ある程度状況を整理して思わず困惑する。 「なんで……私?」  こわばる唇でそう尋ねると、自分を指差した。  いつもなら社長は私の政治参加を拒むのに、なぜこんな重大な会談に出席させるのだ?  発言に気をつけろってことは、発言させる気満々だということだよね。しかし一体なにを? そしてやはりなぜ……?
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