28. 食事会

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「うん、そうだね。簡単にいうと彼は君に会いにきたのだよ。フェーリ」 「……私?」  さらに首を傾げれば、素敵な笑顔で社長はさらっと教えてくれた。 「うん。6年に及ぶ宗教戦争がやっと終焉を迎えてね、君を聖女と信じる宗教がテワダプドルの国教となったのさ」  なるほど。その聖女に会いにきたってことか……って、いやいやいや、待って!  その聖女って、私……⁇  聖女って、この間セルンも言ってたよね。  ふと8年前の記憶が蘇る。  ──ストロング子爵家に拉致された謎の事件。  そういえば当主の口止め料を断ったら、聖女だとか言ってすごい泣きだしたわね……。  その息子の名前は……。そうだ、キーパーだ。  なにも関係ないのに連帯責任で共に追放されたんだよね。その前日にわざわざ屋敷に謝りにきてくれた。キーパーは確か宗教活動に熱心な人だっけ……。気の毒だよね……、って、ん?  宗教、追放、聖女……。え、まさか……!  はっと勢いよく頭をもたげて、社長をみた。 「……ストロング、子爵?」  その名前を口にすると、社長は驚いたようにその青い目を見開いた。が、すぐさまいつもの笑顔を浮かべて、 「さすが私の娘だ、フェーリ」  誇らしげに私を褒めると、慈愛に満ち溢れた表情で頭を撫でてくれた。   「うまく事を運べたら、これから始まる戦争の力になってくれる。だからねフェーリ、頼んだよ?」  戦争の力になってくれるならそれは一大事だ……って、戦争? なんの戦争⁇ これから始まるって、どういうこと……?  唐突すぎて唖然としていると、社長は撫でる手を止めて、再び歩を進めた。 「詳しい説明は後だ。あまり客人を待たせるのはよくないからね。さあ、行こう」  説明は後って、いや、先にしてよ、社長……。  いきなり一国の王が極秘に会いにきたって、このタイミングで言う、普通?  まだ動揺している私を優しく手招きして、ついてくるように促した。いつも思うけど、社長の仕草と言葉のズレが激しいよね……。  拒否権を与えられず、観念してドボドボとその後を追った。
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