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3. 銀色の瞳
「お嬢、どうぞ」
いい笑顔でそう言うと、セルンは私に手を差し出してくれた。
正直、色気満載のセルンの手を取るのに抵抗はある。
しかし、ここは令嬢らしく華やかにエスコートされるべきところ。おずおずしても仕方がないわ。
覚悟を決めてセルンに手をかさねた。
そうして馬車から降りようとした時、
「今日は一段とかわいいよ」
「!」
首元にセルンの温かい吐息が吹きかかり思わず固まってしまった。
ああ、もうー! また私をからかってきた……っ
恥ずかしそうにしているからか、最近よくこうしてセルンにからかわれる。
とはいっても、耳元で囁くだけで実際に私に触れることはない。
本人はイタズラのつもりだろうけれど、私的にはかなり精神にくるのよ……。
これから大事な宴会があるから、無意味に茶化してくるの本当にやめてほしい。
念を押すようにセルンの手をにぎり彼を見たが、本人は分からない風で首を傾げた。
こういう時だけ鈍感なのね、セルンさん……。
深呼吸して気持ちを改めると、できる限り優雅に歩をすすめた。
転生してから参加するはじめての宴会。
これはこの世界に馴染めるための第一歩でもある。
気を引きしめて頑張ろう……!
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