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37. 告解
********【イグ・クニヒト】
「大丈夫ですか、イグ?」
客間のベッドに私を下ろして、ジョセフ様は困惑したような表情を浮かべました。
「ごめんなさい、ジョセフ様。ごめんなさい……」
「大丈夫、大丈夫ですよ」
計り知れない罪悪感から慟哭する私の背中をそっと摩って、ジョセフ様は優しげに声をかけてくれました。
18年前、ジョセフ様が命の危機に曝されたあの日もこうやって、「大丈夫、大丈夫」と言って私を宥めてくれました。
大好きなジョセフ様の優しさが心に重くのしかかります。
ジョセフ様、あなたはもう私を許してはくれないのでしょうか……。
『……そうしてルセハンとルテグレは聴覚を取り戻したとさ』
嗚呼──耳を澄ませばまだ鮮明に聞こえてきます。
幼い時に聞きましたジョセフ様の柔らかい声。
このまま真実を語れば、ずっと聞いていられるこの声をもう二度と聞こえなくなってしまいます。
どうしましょう……。こわい、怖いです。
ただのわがままですが、ジョセフ様にだけは嫌われたくありません。
時を巻きもどせるなら、あの木の下で過ごした日々に戻りたい。
──ジョセフ様と二人で過ごしました、平和で幸せな日々に。
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