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「…おれの弟、アイツはッ見殺しにしたんだ!」
フユは続けて云う。
「アイツ…ってトップ、社長のことか…?」
ナギの問いに大きく頷き、やや興奮ぎみに話す。
「あの時、アイツが、弟を病院まで、連れて行ってくれていたら…ううん、連れていかなくても、救急車さえ呼んでくれたら、助かったかもしれないのに…なのにっ!」
拳を震わせて思い出しながら…
感情を高ぶらせる。
「…ソレってどういう、落ち着いて話せよ、こっちこい…」
ナギは優しくフユの手を引いて、自分の隣に座らせる。
そして…落ち着いて話すよう、背をかるく叩く…
「……、あの日…試験にいった弟を迎えにいった帰り、車で山道を下っていた時、対向斜線からオーバーしてきた車とぶつかって…」
ナギになだめられ、フユは一度、息をついて、記憶を静かに辿る。
「え、…運転、してたのか?お前が?」
話しも気になったが、フユが運転できる年齢だということにまず驚いてしまうナギ。
どうみても中学生のような容姿のフユだが、少なくとも18才以上であることは確かなようだ…
「うん、…おれの車はぶつかった衝撃で動かなくなった、弟はその時シートベルトをしめてなくて、頭から血を流しながらぐったりしていて…」
思い出したくない記憶に…話しながらやや手が震えるフユ。
「…慌てて救急車を呼ぼうとしたけど、山の中だから携帯電話は圏外で繋がらなくて…」
「……」
「だからぶつかって来た相手を確認しに行ったら、アイツがいて…」
フユは思い出したくないあの日のことを…思い出していく…
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