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あの日…忘れもしない、季節外れの強い雨の降る日だった。
試験を終えた弟と自宅を目指していた…
弟の名前は冬輝…真冬に生まれたから…
おれの本当の名前は…。
『夏っちゃんさ、オレのコト気にして全然、恋とかしてないだろ?』
『なんだよ?突然、』
『ずっとオレの親代わりでさ、縛りつけてて、悪いなぁって思ってんだ…』
『なに言ってんだよ今更、それにおれは無理ってわかってるから、こんな容姿じゃ恋とかしろってほうが難しいし、それよりおれは、冬輝が立派になってくれる方が嬉しいし、ちゃんと優秀な大学生になれよ!』
『夏っちゃん…うん、がんばるよ、サンキュ…』
『お互いさまだろ』
両親は弟がもの心つく前に亡くなって、おれと二人で支えあって生きてた。
名前こそ正反対だけど、ふたりは本当に仲がよくて…
お互いの幸せを願って生きていた…
あの瞬間まで…
雨で視界が悪く、突然目の前に突っ込んで来た車を避けることもできなくて…
一瞬だった…
弾かれてガードレールに激突して…
『痛っ…何が、っ!冬、冬輝っ!?』
さっきまで笑って話していた冬輝は…
意識はなく頭からの出血して、変形したドアと座席に挟まっている状態…
『っふゆき!しっかりしろっ!!病院へ、っ、くそっエンジンがッ、なんでっ』
しかし、大破した車は動いてはくれない…
『冬輝!目をあけてッ…っ冬輝を、助けなきゃ…』
電話も通じない山の道で…それでも、一刻も早く助けたくて…
そのとき…
事故を引き起こした車のエンジン音を聞いた…
相手の車は動いている…
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