《ウラとオモテ》後編

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「ちょ、待てっ…ったく、」 いなくなったフユを見てナギは大きく溜息をついてしまうが… 「…責任とれ、か…」 そう呟いてしまう。 「っ…」 カッとなって部屋を飛びだしたはいいが、ゆくあてなどないフユ。 とりあえず洗濯室まで走ってゆく… あの男は憎い、殺したいほど憎いけど… アイツを警察に突き出せば…ここのみんなが捕まる… そんなこと… 嫌だけど、でも…おれは、どうしたらいいんだろう… あぁもうわからない! 頭が痛くなるほど考えながら走っていると… ドン! 出合い頭に誰かとぶつかる。 背が高くて… フユの方が吹っ飛びそうになるところを、ぶつかった相手が腕を持って止めてくれた… 相手を確認して、はっとするフユ… (…ナギ!じゃなくて…) ナギに良く似た… ナギの双子の弟のレンだった。 「…どうした?」 不思議そうに首を傾け聞いてくる。 「……」 複雑な気分… 今さっきナギに腹を立てて怒鳴ってきたのに… 同じカオをしたひとが目の前に居て… おれを心配してる… ナギと同じカオ… でもナギじゃない… この人なら… おれにどういってくれるんだろう。 やっぱり、出ていけって言われるんだろうか… 「…どう、した?ナギに…いじめ、られたのか?」 微動だにしなくなったフユをみて頭を撫でて、ゆっくりと発音しながら聞くレン。 「……っ」 つい先ほどナギに冷たいコトバを聞かされたばかりだったので、優しく気遣うレンのコトバは… フユの心にジンと響く… 気付いたらフユはレンに抱きついていた… 「…え、おい…」 いきなりのフユの行動にレンも戸惑ってしまう… 「レンは…優しい、ナギとは大違い…」 ぽつりとレンに抱きつきながら言うフユ。 耳の聞こえないレンにはフユの言葉は届いていない…
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