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「おま、サキはどーすんだよ…」
レンは常に、多重人格症をかかえるサキと行動をともにしている。
当然付き合っているのだろうと認識してナギは突っ込むが…
「……」
それを聞いてやや睨むようにナギを見て…さっと、フユを連れて去ろうとするレン。
「…おい、フユ!」
ホントにそっちいくのかよ?とフユを呼び止めるが…
「…ふん」
フユとしては、怒って飛び出してしまった身なので素直になれず、フイと顔を背ける。
「かっわいくねぇ!あーもう、勝手にしろ!」
ナギもやけになって、フン、と怒って部屋へ戻ってしまう。
「……」
怒ってしまったナギを見て少し不安な顔をするフユ。
レンはそんなフユの手を引いて自分の部屋を目指す。
「なんで…」
フユは手を引かれながら…レンの意図がわからなくて呟く…
しかし、耳の聞こえないレンには届いていない…
横顔は…ナギと同じなのに、本当に違う人間…
そう思うと…少し不安になってくるフユ。
レンは静かにフユを自分の部屋に招き入れる。
レンの部屋には、なんと小さめだが、ちゃんとしたピアノが置いてある、驚いているフユに、そっと座るように促すレン…
やはり部屋の中もナギとは全然違う。
「…ごめん、突然…連れ込んで…」
不意にレンがフユをみつめ話しはじめる。
「え…」
「危害を…加える気は、ないから…安心して…」
発音が下手なレンはフユが聞き取りやすいようゆっくり話す。
「うん…」
声も…ナギと似ているはずが…
話し方が違うだけで、まったく違うように聞こえる。
「…ナギと、何かあったのか?」
俯くフユに静かに聞いてくるレン。
「……」
どう伝えようか戸惑っていると…
「ナギに…突き放される…ようなことを…言われた?」
「え…?」
不意に言われた言葉が的を得ていたので驚くフユ…
なぜ判るの?と目で問い掛けてしまう。
「あいつは…そういう、奴だから…」
「…レン?」
「…サキの時も同じ…いや、その、ずっと前から…アイツは、本気になる前に逃げる…ごまかそうとする…」
少し苦い顔をするレン。
「サキ?」
「…サキは、ナギのことが好きだったんだ…」
レンは静かに頷き、話し始める。
「え?」
思ってもみないことでドキリとしてしまうフユ…
いつも一緒にいるから、サキはレンのことが好きなんだとばかり思っていた…
たぶんナギだってそう思ってる筈…
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