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「ナギは…真剣にならない、でも…それは、俺の…せいでもある…」
レンは静かにそう話す。
「どうして…?」
フユはナギのことが聞きたくて問い返す。
「…随分、前の話…」
ゆっくりと話し出すレンに、頷きながら聞く。
「子どもの頃…まだ俺と、アイツが一緒に住んでた時…」
親が離婚する前の話…
「双子だった俺と…アイツは、いつも比べられた…同じように、育った筈が…勉強でも…スポーツでも…俺はナギに勝てなかった…」
悔しかったけれど、そんな…何でもこなすナギを尊敬もしていた…
けど、あの時からナギは…
「…ピアノでも…」
勝てなかった…。
不意に部屋にあるピアノに触れて言うレン。
「ピアノ…弾けるの?」
「母が…ピアノの教師をしていたから…物心つくまえから…習わされてきた…」
レンは頷いて答える。
「…ピアノは、好きだった…けど、母に褒められるのは、いつもナギだった…どんなに練習しようと…アイツは軽く俺を越していく…、それを、繰り返すうちに…俺はピアノを弾くことが嫌になってきた…」
レンは溜めてきた思いを吐き出すように話しを続ける。
「ピアノを、弾くことを…やめてしまった、そんな俺を見て…なぜかナギも弾かなくなった…才能があるのに…母親が説得しても…まったく興味を、しめさなくなり…」
フユに伝わっているか伺うように見つめながら…話すレン。
フユは頷いて聞く…
「母親に俺がやめたせいだと言われ…俺はまた、ピアノを弾きはじめたけれど…ナギはそれっきり弾かなくなった…」
あの時から…
「それからだ…ナギが、本気を出さなくなったのは…自分が本気をだせば…俺のやる気を削いでしまうと思ったから…アイツは…」
ナギは不真面目を装って…競うことをやめてしまった。
「サキの事も…俺がサキを好きになっていると知ったら…アイツは、わざとサキに嫌われるような行動をとって…」
俺を優先させようとする。
「俺は…つねにアイツに背中を押され、守られて…それが情けなくて、悔しくて腹が立つ…」
唇を噛むように…
「……」
「俺の…この耳が駄目になって…余計に、アイツは…」
俯いて悔しそうに言葉をだすレン。
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