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「……」
フユはそっとレンに近づいて…拳をつくるレンの片手に触れる。
はっと顔をあげてフユを見るレン。
「よかった…」
安心したように微笑んで、ぽつりと呟く…
「え?」
「レンは、ナギのこと嫌ってるわけじゃないんだ…」
そう、優しくきく…
「……」
「ナギ、レンに嫌われてるって気にしてたから…」
「…嫌ってるわけじゃ…ない、ただ…アイツには、アイツらしく…生きてほしいだけ…俺に、遠慮せず…」
「たぶん…ナギ、遠慮してるわけじゃないと思う…気になるんだよ、ほっとけなくて、二人だけの兄弟だから…」
自分にも解る感情…
親がなくて、弟と二人…支えあって生きてきたから…
少しくらい自分を犠牲にしても、ふゆきには幸せになってほしいと願っていた。
「……」
「レンがナギのこと、気にしてるようにナギもレンが気になるんだよ…」
「フユ…お前はいいやつ、だな…」
優しく頭を撫でて伝えるレン。
勝手に連れ込んだ自分の話しを聞いてくれた…
「そんなことない…」
ぶんぶんと首を振る。
復讐しようなんて考えていたんだから…
「…だから、ナギが気に入るわけだ…」
続けてそんなことを言うレン。
「えっ、気に入られてなんか…さっきもここから出ていけって…きっと、邪魔になったんだ、おれのこと…」
フユはやや心を沈めて…呟く。
「違う…ナギは、本当に大切なものは、軽く扱わない…追い出そうとするのも…大切だからこそ…」
レンはフユを見つめながら確信したように言う。
「なんで?大切なら一緒にいたいはずなのに…おかしいよ…」
フユの感覚ではわからない…
「ナギは、お前のことを、助けた…気に入ってるから…そばに連れてきた。けれど、ここに長くフユを置くことはできないから…」
レンは手話を交えながらゆっくりと伝える。
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