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「だから、なんで?」
首を傾げたままのフユ…
「…フユを、汚したくないんだと…思う」
「汚す?」
レンの言った言葉の意味がわからなくてまた聞き返すフユ。
「…ナギは、頭がいいから…色々と先を考えて…少しでも壁があると、感じたら…壁を避けてすり抜けるような…生き方を、今までしていた…」
レンはフユの問いには直接答えず。
「……」
「けれど…、フユならアイツを変えられるかもしれない…なにものにも捕われず、競いあっていた…あの頃のように…」
「おれに…そんな力は…ない」
首を強く振って否定する。
「さっき、ナギを…試してみたんだ…」
レンはふっと雰囲気を優しく変え伝える。
「え?」
「わざと…ナギに、俺達が…キス、しているように…見せて…」
フユの反応をうかがうように伝えるレン。
「えっ?」
フユは気付いていなかったらしく驚いてしまう。
「あいつは、俺と、競おうとしない…だから、わざと、フユを気に入っている風に見せて、反応を見たんだ…いつもなら、簡単に諦めて、俺に譲るナギが…さっきは、動揺して引き止めていた」
「……」
答に困って止まるフユ。
「…フユを使って試すようなことをして、ごめん、でも…はっきり判った。ナギはお前のことを大切に思っていることが…本人にも自覚がないかもしれないが…」
「……嘘、」
フユはまだ信じれない様子で呟く…
「追い出す理由を聞いたか?」
「ううん…でも、」
「…ナギにはナギの生き方が出来るはずなんだ…ナギを連れて行ってくれないだろうか…?」
「え?どこへ?」
唐突な話しで戸惑うが…
「…外へ、アイツはこんなトコで働かなくても生きていけるから…」
レンは真剣らしく、頼んでくる。
「……無理だよ、そんな…どうやって…」
首を横に振って答えるフユ。
「…それでも今、アイツを本気にさせることが出来るのは…フユだけだ」
双子だからこそ分かることもあるから…
確信をもって伝えるレンだが…
「……」
「俺は、そう思う…」
微笑み頷くレン。
「……」
そう言われても、ナギに好かれているなんて自信ないし…また出ていけって言われるのも恐いし…
悩むフユ…
「今すぐに…とは言わないから…取りあえず、今日は、事情を話して、ルキの所にでも泊めてもらったらいい…」
気遣ってレンはそうすすめる。
こくんと頷いてみる…
ナギとは気まずいし、まだ心の整理がついてないから…
優しいルキのところなら安心できるけど…
なんだか、不安な気持ちのフユだった。
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