《ウラとオモテ》後編

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そのころ、怒鳴って自分の部屋に帰ってふて寝状態のナギ… ベッドへ転がって…眠ろうと頑張ってみるが、イライラしてしまって眠れそうにない。 「あぁーもう、何だってんだ…」 フユとレンが…いつから? キスする仲? 聞いてねーぞ、そんなこと… しかも堂々と、俺の前で… 俺さえまだ何もしてねぇつーのに、ってそうじゃない… フユもフユだ、あっさりついていきやがって… 「あいつら…」 どこまでの仲なんだ?まさか…ヤってるってことはないよな… 有り得ないと思いつつも、なんともいえない焦躁感… なんでこんなにも気になっているのか… あんなガキ… 俺の範囲外だ… 範囲外な筈なのに… ここにいないだけで…こんなにも焦ってるんだ?俺は… 追い出したかった筈だ… 出て行ってくれたら…今までのように自由に遊べる。 その筈が… 今は…誰かを誘う気になんかなれない… 今までにはなかったことだが… レンに奪われたくないと…そういう感情が確かにある。 「くそっ、」 がばっと起きあがるナギ… うだうだするのは性にあわねぇ! ナギは決心したように部屋を飛び出す… 向かった先はレンの部屋… 直接問い正してみないと気が済まなくなったナギ。 ふっと立ち止まる… これから会おうとしている人物二人がそろってどこかへか向かって歩いている。 背を向けているのでナギには気付いていないが… 「コホッ…」 ひとつ咳払いをするレン。 「大丈夫?レン…」 「あぁ…久々に、たくさん喋ったから…喉が枯れた…」 苦笑いで話すレン。 「はは、普段喋らないんだ…」 「まぁ…こんなだしな、聞き取りにくかっただろ…」 耳が聞こえないため、少し発音が下手なレン。 「ううん、全然…」 「…ありがとう、俺は…半分くらい読み取れなくて…聞き流してしまっていたけれど…」 素直に白状するレンに… 「そうなんだ、普通に会話してたから判んなかったよ…できるだけゆっくり話すね…あ、今度手話も教えて」 くすくす笑って答える。 「…どうしても、唇を読むのは、限界があるから…でも、やはりフユは優しいな…」 「そんなこと…ないって普通だよ、」 ナギの存在に気付かず自然に会話している二人を見て…疑う余地がなくなってきそうで… やっぱ、つきあってんのかよ… 「待てよ…」 堪らなくなって後ろから低く呟くように呼ぶナギ… それにドキッと反応して振り返るフユ。 そんなフユに気付いてレンも振り返る… 「ナギ…」 ポツリと呼ぶフユ。
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