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「ナギになんか、教えてあげない!」
キッと怒ってナギに怒鳴ってしまうフユ。
「なっ、」
「おれ行く、レンが待ってるから」
逃げようとするフユ…
早くレンのトコロに逃げたかった…
自分はどうすればいいのか聞きたくて…
「っ、待てよ、」
とっさに引きとめようと…
ぐいっと、小柄なフユをだき抱えるように捕まえ、ベッドへ押し倒してしまう…
「わっ、…ナギ、ちょ、なんか変だよ、」
びっくりしながら言葉を出すフユ。
いつもの余裕は微塵もないナギ…
「……たしかに、俺らしくないわな…なんでだろうな…なに焦ってんだ…?」
そう自問しながらも…力を緩めないナギ。
「…ナギ?」
「アイツとした?」
「な、にを?」
ナギが考えていることが分からなくて、困惑してしまう。
「…まだ、なんだな…?」
なら、自分のモノにしたい…
「ちょ、なに、ナギ…!?」
構わずフユを押さえ付けながらキスするナギ。
荒っぽいキスに…一瞬固まってしまうが…
「ん…っう、や、やだ…っ」
なんでこんなことになっているのか混乱して、キスから必死に逃れながら…拒否してしまう。
はじめて…ナギからのキス…
でも、なんか…苦しくて…
まだ、ナギの気持ちも聞いてないし…自分の想いも伝えていない…
そんなあやふやな状態で、こんなふうにされるのはいやだ…
「…そんなに、嫌かよ…」
不意に動きをとめてナギが呟く…
いつの間にかフユの目からは涙が零れ落ちていた…
「同じ顔でも…レンが、いいのかよ」
泣くほどイヤか…
悔しい気持ちを言葉の刃に換えようとするナギ…
「……っぅ、ふッぅ…」
フユは、つらくて…顔を両手で覆って泣いてしまう。
ナギは自分のことなんかなんとも思ってない…
ナギはあきらかにレンと張り合っているだけのように聞こえて…
「…、フユ…泣くなよ…嘘だって、」
泣かしてしまって、ようやく我にかえったかのように…
後悔して優しく囁くナギ…
起き上がりながら…慰める。
しかし…その言葉にも傷ついてしまう。
嘘…うそで、キスできるんだ…
ナギは…挨拶がわりなんだもん…
誰とでも…キス…できて…
おれは特別じゃないから…
それを実感したから、こんなにもツラい…
はじめてのキスがそれだったから…余計…
「もう、しないから、な…泣くなよ…」
フユの横髪に触れ、弱ったように続けるナギ。
「…っ、」
ただ、はっきりしたのは自分の気持ち…こんなに傷つくほど、ナギが好きなんだ。
「参ったな…」
フユの頭を撫でながら、どうすれば泣きやむか弱り気味に呟くナギ…
フユ相手だと、どうしても上手い言葉がでてこない…
ナンパ人生を歩んできた自分だから、なぐさめ文句ならいくらでも知ってる筈なのに…
うわべだけのコトバでは…
「…ていく、」
何とか涙を堪えて言葉をだすフユ…
「え?」
俯くフユの顔を覗き込んで聞くナギ…
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