《ウラとオモテ》後編

22/35
前へ
/104ページ
次へ
「ナギになんか、教えてあげない!」 キッと怒ってナギに怒鳴ってしまうフユ。 「なっ、」 「おれ行く、レンが待ってるから」 逃げようとするフユ… 早くレンのトコロに逃げたかった… 自分はどうすればいいのか聞きたくて… 「っ、待てよ、」 とっさに引きとめようと… ぐいっと、小柄なフユをだき抱えるように捕まえ、ベッドへ押し倒してしまう… 「わっ、…ナギ、ちょ、なんか変だよ、」 びっくりしながら言葉を出すフユ。 いつもの余裕は微塵もないナギ… 「……たしかに、俺らしくないわな…なんでだろうな…なに焦ってんだ…?」 そう自問しながらも…力を緩めないナギ。 「…ナギ?」 「アイツとした?」 「な、にを?」 ナギが考えていることが分からなくて、困惑してしまう。 「…まだ、なんだな…?」 なら、自分のモノにしたい… 「ちょ、なに、ナギ…!?」 構わずフユを押さえ付けながらキスするナギ。 荒っぽいキスに…一瞬固まってしまうが… 「ん…っう、や、やだ…っ」 なんでこんなことになっているのか混乱して、キスから必死に逃れながら…拒否してしまう。 はじめて…ナギからのキス… でも、なんか…苦しくて… まだ、ナギの気持ちも聞いてないし…自分の想いも伝えていない… そんなあやふやな状態で、こんなふうにされるのはいやだ… 「…そんなに、嫌かよ…」 不意に動きをとめてナギが呟く… いつの間にかフユの目からは涙が零れ落ちていた… 「同じ顔でも…レンが、いいのかよ」 泣くほどイヤか… 悔しい気持ちを言葉の刃に換えようとするナギ… 「……っぅ、ふッぅ…」 フユは、つらくて…顔を両手で覆って泣いてしまう。 ナギは自分のことなんかなんとも思ってない… ナギはあきらかにレンと張り合っているだけのように聞こえて… 「…、フユ…泣くなよ…嘘だって、」 泣かしてしまって、ようやく我にかえったかのように… 後悔して優しく囁くナギ… 起き上がりながら…慰める。 しかし…その言葉にも傷ついてしまう。 嘘…うそで、キスできるんだ… ナギは…挨拶がわりなんだもん… 誰とでも…キス…できて… おれは特別じゃないから… それを実感したから、こんなにもツラい… はじめてのキスがそれだったから…余計… 「もう、しないから、な…泣くなよ…」 フユの横髪に触れ、弱ったように続けるナギ。 「…っ、」 ただ、はっきりしたのは自分の気持ち…こんなに傷つくほど、ナギが好きなんだ。 「参ったな…」 フユの頭を撫でながら、どうすれば泣きやむか弱り気味に呟くナギ… フユ相手だと、どうしても上手い言葉がでてこない… ナンパ人生を歩んできた自分だから、なぐさめ文句ならいくらでも知ってる筈なのに… うわべだけのコトバでは… 「…ていく、」 何とか涙を堪えて言葉をだすフユ… 「え?」 俯くフユの顔を覗き込んで聞くナギ…
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加