第1話 プロローグ

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第1話 プロローグ

闇を切り裂く閃光。同時に小さなうめき声が聞こえた。 夜目のきかないユーリは敵の居場所を把握しかねていたが、その音で正確な位置を捉える。 場所は10メルトル先。気配は恐らく5人。2人が木の上で待機し、2人は負傷者の手当て。もう1人は少し離れた位置からこちらの動向を探っているようだ。 これなら一気に倒せる。そう判断したユーリは、足に魔力を溜め、文字通り爆発。その威力と爆風を利用し、高速で5人に襲い掛かった。 急襲から2秒も経たないうちの特攻。国王からの刺客たちは明らかに浮足立っている。それを証明するように、爆発音から数瞬後に目の前に現れた『元勇者』ユーリの一太刀を防げる者は存在せず、あっさりと負傷者含む3人を倒されてしまう。 振り下ろした剣を担ぎなおし、木の上にいる刺客2人を彼は見上げる。 「この3人は気を失ってるだけだから、早く連れ帰って治療してあげてよ。王宮に戻れば、腕の良い治療師はいるでしょ? なんなら、紹介してあげようか?」 鬱蒼とした木々の隙間から漏れる月光に怪しく光る銀髪。血のように赤い瞳。体型こそ155センチルと小柄だが、身の丈に合わぬ大剣を軽々と振り回し、快活な笑顔を浮かべる。 「……『愚弄人(グロウニン)』がなにをほざく!」 フードを目深に被った刺客が叫ぶ。 「あっは。酷いな」 『勇者』の称号を剥奪されたユーリに新たに与えられた蔑称『愚弄人』。
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