売りたいガラス玉、盗みたいガラス玉!

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売りたいガラス玉、盗みたいガラス玉!

「なんでそんな危険なものを早く言ってくれないんですか! 知ってれば僕だって買いませんよ! バカなんですか!」  車を運転しながらイレブンは、思いつくだけの文句を後部座席にいるトゥエルブに浴びせる。 「イレブンやナインがわめくと思ってさ……」 「ナインはともかく、僕はそんな発狂したりしませんよ!」  いましてるだろ。トゥエルブは心の中で小突く。  ちなみにナインというのは、トゥエルブのもう一人の助手で、名探偵を自称している女性だ。  イレブンはさらに疑問を投げかけた。 「あと未だブラックホールの観測は難関だと言われているのに、どうして売買が成立したらブラックホールが増えるなんてことが分かるんですか!?」  イレブンの疑問を軽く受け止めるようにずっとパソコンをいじっているトゥエルブ。仕掛けておいた監視カメラでは、ケイソがすでに発送準備を始めていた。 「知らねーよ。ガラス玉の謎は、俺様の水晶が教えてくれたんだから。あと、ちゃんと前を見て運転してくれ!」  イレブンはしぶしぶ前を見た。 「ああ、もう! あの水晶があなたの母親の形見じゃなければ、かち割りたい気分ですよ! あとついでにブラックホール出現ガラス玉も!」  ガラス玉を壊すという発想はトゥエルブにとって盲点だった。だが、ブラックホールなんて一般相対性理論でも証明しきれない危険なものを発生させる代物を、自ら破壊する気にはなれない。 「そんなことをして宇宙の法則が乱れても困る。やめてくれよな」 「わかってて言ってるんです! 神様ってどうして余計な代物ばっか作って、完璧に世の中を作ってくれないんですかね!」  そんなイレブンの慌てぶりを見てやっぱり教えない方が良かった気がしたトゥエルブは、話を少しそらす。 「ネットオークションの売買が成立するタイミングっていつだ?」 「人によるんじゃないですか? 僕は発着してお礼のメールを送ったら完全に売買成立だと思っていますけど。入金段階で成立だと思っている人もいるでしょうね」 「つまり売買成立条件はガラス玉の考え方によるんだな……」  クレジットカードで決済が終わった時点ではまだブラックホールは出現していない。水晶の予言が正しければ、どこかのタイミングで確実に地球に害の及ぶブラックホールが出現するはずだ。イレブンは問い出す。 「ニュースでブラックホール関連のことはまだやっていないんですか?」 「そんなすぐわかるもんじゃないしな。少なくとも俺らが無事な内は地球の近くにできてないってことになる」  イレブンはため息以外、もう口から出るものはなくなっていた。 「とにかく発送前に盗んでしまえば売買は不成立だし、万が一ケイソのやつが別の人間に売るなんてことも起きない。俺様特性金庫に隠せば永遠にガラス玉は競売にかけられず、ブラックホールができることもない。いい事づくめだ」  バックミラーごしに見えるトゥエルブの表情。それは、獲物を捕らえる肉食獣の目だった。
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