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さようならの日に
「流石にもうブランコに乗る年ではないよな」
背後から、からかいの言葉が聞こえる。
「香織、やっぱりここにいた」
そう言って、こちらに顔を出した彼の手には、紙袋が握られていた。
「毎年お祝いしあってたのに、今年は祝ってくれないの?」
「……昨日、恒樹の家の前にプレゼント置いといた」
香織は、ブランコの鎖をぎゅっと握りしめ、小さく呟いた。
「ああ、見たよ。でも言葉がなくちゃね。寂しいだろ」
そう言って切なそうに微笑む恒樹の顔を見た香織は、胸がぎゅっと締め付けられた。
恒樹は、何も言わない香織に弱ったような顔をして、隣のブランコにそっと腰掛けた。
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