さようならの日に

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「結局自分も乗ってるじゃん」  ボソッと呟く香織に、恒樹は思わず吹き出した。 「ごめん。もしかしてさっきの言葉、気にしてる?」  笑い混じりに謝る恒樹の様子に、香織の頬は膨れ上がる。 「全然」  恒樹はツボにはまったのか、ひたすらに笑っていた。  呼吸が整うと、すっと立ち上がり香織の方を見る。 「俺、音大受かったよ」  しばらくの沈黙の後、俯いたままの香織が口を開く。 「…いつ、引っ越すの?」 「2週間後。もう部屋も決めてるんだ」 「そっか」  二人の間に長い沈黙が訪れる。  その沈黙を打ち破ったのは恒樹だった。
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