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プロローグ
受け取った命は醜いものだった。
”それ”は何かを奪い、奪われてきた。
振り返れば知らぬ顔の死骸が転がっている。
”それら”は手を伸ばしもがき苦しんでいた様だ。
何かを望み、奪い、奪われて死んでいった。そんなものの死骸だ。
受け取った命を疑った。
”それ”は誰かを騙し、誰かに騙されてきた。
振り返れば知らぬ顔が涙を浮かべている。
”それら”は悔しさに震え、恐怖に怯え、血走った目で辺りを見回していた。
今度は騙されまいと、次は騙してやろうと。そんな目をしていた。
生きるということは罪だ。そして、生きることこそ罰だ。
人は生まれながらに罪を犯し、罰を受ける。
だが死は救済ではない。死は呪いだ。
罰を受ける期間を伸ばすための延命装置というだけだ。
そして、人はより多くの罪を犯す。
受け取った命は愚かだ。
なぜなら”それ”を尊いというのだから。
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