春のおわりに

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「ずいぶん遅いじゃないか」 立ち飲み屋の前を通りかかって 直隆は父親に声かけられた。 「あ、ああ」 返事をしてはじめて 自分がボンヤリとしながら 電車に乗って帰路にあったと 直隆は気づいた。 上機嫌な正隆に一杯だけ 立ち飲み屋で付き合い、 二人で玄関を開けると、 次男坊の安隆の姿はなく、 「そうだ、安隆は今夜、  友達のところへ泊まると  言ってたよ」 忘れていた伝言を正隆に。 二人で簡単に茶漬けやシャワーを 済ませている間は 考えていなかった絢のことが ベッドへ入ると再び 思考の中心へとやってくる。 「何だって今頃・・・」 絢、古河絢(こがあや)は 高校時代の先輩で 直隆の初恋の・・・ ”男“ に芽生えた相手だった。
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