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けれども呆気なく
「彼について松山へ行くわ・・・」
雪の日、直隆は別れを告げられた。
「僕のことは気まぐれ?!
ひまつぶしだった?!」
「酷いこと・・・言わないで。
大介は今・・・・
大学院に進めなかったから
自分に自信を無くしているの。
でも松山で教員の仕事があって・・
『君がいれば立ち直れる』って」
「問題なのは大介先輩の気持ち
ではなくて、あなたの気持ちだよ!
僕を好きなら僕を選ぶはずだ!」
「ここであなたを選んで
大介を傷つけるなんて」
「いまさら・・・」
「今の私は・・・あなたを
あなたを愛して・・・」
「ウソだ・・・」
「え・・・・・?」
「ウソなんか言うな!
僕が傷ついても平気なんだろ?
愛なんて・・・ない」
「直隆さん・・・、私の、」
「遊びだったんだ!
あなたは最初から僕を
愛してなんかいなかった!
よくわかったよ・・・
こんな残忍な女を好きだった
自分が、心底滑稽だ!」
詰って別れた夜・・・
夜明けまで車の中で
泣いていた惨めな自分を
長く・・・長く
直隆は心から
消すことが出来ずにいた。
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