春のおわりに

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美大を出てから 服飾系のフリーターで 生計を立てていた龍次が デザインの仕事でネットを 賑わせるようになると 生地や女性小物のデザイン依頼が 殺到するようになり 一躍時代の寵児になった。 母校へ訪れては 後輩達に金をばらまくように。 何度かの飲み会の 一員でしかなかった安隆に 声をかけてきたのは龍次、 「君が “描く花” 女子の間じゃ  人気だね」 初耳だった。 確かに一度や二度は 褒められたこともあるけれど 美大の大学院へ残るとも 美術教員になるとも 他への就職とも 何の考えもないままに 四回生になっていた安隆にとって 最近は (僕は何が描きたいのか・・・  ほんとに描くことが好きなのか?) そんな疑問すらもたげ始めながら 普段を暮らしているだけだったから。
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