春のおわりに

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生嶋(いくしま)家の朝は遅い。 深夜の読み物が止まない 家長で大学教授の正隆(まさたか)は勿論、 今年三十歳になる弁護士の 長男・直隆(なおたか)は 裁判準備に余念がないから 常にパソコンは明るいまま。 直隆より八つ下の次男・安隆(やすたか)は 西洋画を美大で学んでいるのだが、 作品製作には夜更けが 具合が良いらしい。 いい加減な時間にやすんで いい加減な時間に起床、 いい加減な食事をしてから 各々の職場・学校へ・・・。 三人を制するはずの女・正隆の妻で 息子二人の母は 十三年前に他界していた。 以来三人で巧く小綺麗に 週に三度くらいは 談笑しながら夕食を囲む、 少し侘しい気楽な三人暮らしを 過ごしている。
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