春のおわりに

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荻窪の自宅から職場までは 八王子側へ小一時間。 正隆が通勤に使う時間帯は 混んでるほうではないから ゆっくり新聞に目を通す。 このネット時代に、新聞なのだ。 専門が法学、ことに刑法であるから 巷の出来事は重要。 朝刊・夕刊で確認、 大学の研究室へ着いてからは 数日分の事件記録を 明瞭に纏めてくれている資料を 講義や会議の合間に。 纏めてくれているのは・・・ 千家結衣子(せんけゆいこ)。 博士課程の大学院生だが そこいらの歳ばかり重ねた 助手よりも勤勉で賢い。 「おはようございます」 研究室の扉を開けて 結衣子の全身が 正隆の視界いっぱいになると 正隆の胸は甘く疼く、 まるで若者みたいに・・・。 何処かに埋没されていた “男“ としての正隆が・・・ 初々しい血潮となって 爪先までも満ちてゆく・・・。 正隆は結衣子に恋をしていた、 ずっと・・・ずっと・・・。
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