春のおわりに

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夕刻からは四年生のゼミクラスと 大学院生がともに 誕生日会など催して 正隆を祝ってくれた。 もっとも、何かと言い訳して 連中が飲み会を開くことは 折り込み済みであるから 一次会の終盤に、 「これであとは楽しくやってくれ」 少しばかり紙幣を置いて正隆は退散。 そのあとは・・・ 「先生、お茶して帰りましょ」 修士課程二年の松堂鈴子が 声をかけてくれるのを 密かに期待していた。 鈴子の隣には結衣子・・・。 鈴子は同業の友人より預かった娘で 同じ関西出身の結衣子を たいそう慕っていた。 鈴子が研究室へ入って以来 何かにつけて 「三人で帰りましょ」 「少しお茶にしましょ」 「先生と結衣子先輩は私の車で」 鈴子が声をかけてくれる。 お陰で結衣子と一緒にいる時間を 数多く、正隆は過ごせるように。 結衣子が学生である以上 二人になることを自分から 仕向けられない正隆にとって 鈴子の何気ない誘いは “天の恵み” なのだ。 そのうえ・・・・・・。  
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