春のおわりに

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「私のマンションの隣部屋が  空いたんですよ!結衣子先輩、  引っ越したらいいのに」 鈴子の誘いに応じて 井の頭公園近くにある 鈴子の住むマンションに 昨年、結衣子は転居した。 井の頭公園は 正隆の自宅からはすぐだ。 毎日曜日とはいかないまでも 「今、井の頭公園なんです」 鈴子からメールが入って 勇む心で行ってしまう。 軽いランニングをしながら チョロチョロ走る鈴子に 近からず遠からず 正隆は結衣子と散策を楽しむ。 大学でするような小難しい話でなく テレビで興味深い話題があったとか 雨が多いの少ないの・・・ 然り気無く、何処にでもある話に 正隆は声を立てて笑い・・・ 「桜もおしまいですね」 そう言いながら空を仰ぐ結衣子。 白の春コートに映える長い黒髪、 大和撫子の代名詞のような 清廉な横顔を眺める最近・・・ 春の陽が、身体の芯まで 染み込むように 募っていくのは正隆の想い。
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