本が欲しいんです。

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本が欲しいんです。

 どうしても本が欲しい。そう思ったことはないだろうか。図鑑、雑誌、漫画、小説など、たくさんある中、シリーズ物だから、どうせ買うなら全巻まとめ買いしたい。そう思ったことはないだろうか。  最近私は本を少し我慢していた。色々と自粛しなければいけない期間。外に出ることもままならない今、仕事をするにも責任を問われる。しかし家にいる時間が増えて食費や光熱費なんかが上がってしまう。  だから最近は趣味にお金を使わないよう注意していた。しかしそれも限界が来るものである。  ついこの間第一期が終わりを迎えたアニメがある。悪魔に売られた人間の話だが、もう面白いの一言に尽きる物語だ。それは漫画が原作として発売されていた。  この時期にこんなアニメを見た私が悪いのかもしれないが、この漫画をどうしても欲しいと思った。お金がない上に、生活は苦しい状況で、とても変えたものではない全巻まとめ買いは、夢のまた夢だった。  こんなご時世でもアルバイトを募集しているところはそれなりにある。数か月ちょっとずつ貯めることができたら買える、と思った私は、掛け持ちする勢いでアルバイトを始めたわけだが、片方は休業してしまった。  これには正直泣いた。傍から見たら笑えるほどひどい顔をしていたらしい。妹も父も母も私を見て笑った。だが本気で泣いていると分かってから同情心でも湧いたのかもしれない。  母が私に向かって優しく微笑みながら言ったのだ。「全額出すのは無理だけど、貸すくらいならいい」と。  この時は本当に母に抱き着いて逆に泣いたものだ。今思えば恥ずかしい。  ところがそこで新たな問題が私の前に立ち塞がった。それは、本を買いに行こうにも、書店自体が休業している、という点だ。つまり、本が買えない。  またもやここで号泣する私。あまりに悔しくて二日ほど目元が赤かった。だがそれを覆す意見をくれた友人がいた。彼は言ったのだ。「ネット通販使えばいいじゃない」と。  まさに天才! と感激した私は、そこでようやく安心した。一時はどうなるかと思っていた本の購入は、ネットでできると分かったのだから。  まあ普段使わないネット通販や電子書籍には正直違和感を感じたが、私は意気揚々としてパソコンを立ち上げようとした。が、それは出来なかった。  なんとタイミングよく買い物に行くというのだ。それも少し遠いショッピングモールで時短だがやっているという百均に。  正直行きたくはなかったが、お金を借りる以上手伝いはすべきだと判断した私は、どうせ後でも買えるのだから、と買い物について行った。  ところが行った先では、百均に加え、本屋も時短でやっていたのだ。それも喉から手が出るほど欲しかったあの漫画のシリーズ全巻が置かれていた。  まあその先はお分かりいただけただろう。  結果的に生活は一層苦しくなってしまったが、大きな判断を下したことで精神的な面のダメージは大幅に軽減されたのだ。私は私の判断を後悔することはないだろう。
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