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「え?」
「お前の夢とやらに、協力しよう」
「本当っ? じゃあ、報酬とか」
「別にいらない。ただ、戦えればそれでいい」
「……そう」
また何か言うかと思ったが、ノワは意外にもあっさりと受け入れた。
ノワは飛び上がるように立ち、戦士の手を掴んだ。
「じゃあ、早速行きましょう!」
「まだ雨は止んでないぞ」
「うっ……じゃあ止んでから!」
「いや、ここで一夜明かす」
「えぇー!? 骸骨なのに疲れるの?」
「休めないと骨が疲弊して折れる」
「何か、大変なのね……分かったわ」
ノワは落胆の声を漏らしながら、戦士の隣にまた腰を下ろした。
「じゃあ、これからよろしくね。えっと……」
「スケルトンで構わない」
「それモンスターとしての名前でしょ……いいわ。私が名付けるから」
「そうか」
「もう少し喜びなさいよ。そうね……あっ!」
ノワは難しい顔で俯いき出したが、すぐに晴れ晴れしい笑顔を見せた。
「『ドラゴントゥース・ウォーリアー』なんてどう?」
「……ドラゴンの歯の戦士か」
「そ! スケルトンって聞いて思い出したんだけど、そのモンスターの元になった『スパルトイ』ってギリシャ神話の戦士がいるのよ。で、退治したドラゴンの歯を撒いたら、地中からスパルトイが誕生したんだって」
「……変な名前だな」
「変とか言うな!! あんたが考えないから私が考えてあげてるんでしょう!?」
「いいのか? 退治したドラゴンの歯なんて」
「……退治されるんじゃないわ。私自ら、歯を撒いてやるのよ」
「なるほど」
「ドラゴントゥース・ウォーリアーだと長いから……ドラゴントゥースって呼ぶわね」
「好きにすればいい」
「……だから、もっと喜びなさいよ。自分の名前を手に入れたんだから」
「喜ぶことなのか?」
「喜ぶことよ!」
ぐいと、ノワがしかめっ面を近づけてきた。また何か怒っているのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
ノワは、また満面の笑みを浮かべた。
「よろしくね。ドラゴントゥース」
「……あぁ」
「あぁ、じゃない! よろしくでしょう!?」
「よろしく」
「あと名前呼びなさいよ」
「何故」
「またそんなこと言って!!」
洞窟の中で、ノワの声がひっきりなしに響いている。
不思議と、悪い気はしなかった。
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