ドラゴントゥース

6/7
前へ
/7ページ
次へ
「え?」 「お前の夢とやらに、協力しよう」 「本当っ? じゃあ、報酬とか」 「別にいらない。ただ、戦えればそれでいい」 「……そう」  また何か言うかと思ったが、ノワは意外にもあっさりと受け入れた。  ノワは飛び上がるように立ち、戦士の手を掴んだ。 「じゃあ、早速行きましょう!」 「まだ雨は止んでないぞ」 「うっ……じゃあ止んでから!」 「いや、ここで一夜明かす」 「えぇー!? 骸骨なのに疲れるの?」 「休めないと骨が疲弊して折れる」 「何か、大変なのね……分かったわ」  ノワは落胆の声を漏らしながら、戦士の隣にまた腰を下ろした。 「じゃあ、これからよろしくね。えっと……」 「スケルトンで構わない」 「それモンスターとしての名前でしょ……いいわ。私が名付けるから」 「そうか」 「もう少し喜びなさいよ。そうね……あっ!」  ノワは難しい顔で俯いき出したが、すぐに晴れ晴れしい笑顔を見せた。 「『ドラゴントゥース・ウォーリアー』なんてどう?」 「……ドラゴンの歯の戦士か」 「そ! スケルトンって聞いて思い出したんだけど、そのモンスターの元になった『スパルトイ』ってギリシャ神話の戦士がいるのよ。で、退治したドラゴンの歯を撒いたら、地中からスパルトイが誕生したんだって」 「……変な名前だな」 「変とか言うな!! あんたが考えないから私が考えてあげてるんでしょう!?」 「いいのか? 退治したドラゴンの歯なんて」 「……退治されるんじゃないわ。私自ら、歯を撒いてやるのよ」 「なるほど」 「ドラゴントゥース・ウォーリアーだと長いから……ドラゴントゥースって呼ぶわね」 「好きにすればいい」 「……だから、もっと喜びなさいよ。自分の名前を手に入れたんだから」 「喜ぶことなのか?」 「喜ぶことよ!」  ぐいと、ノワがしかめっ面を近づけてきた。また何か怒っているのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。  ノワは、また満面の笑みを浮かべた。 「よろしくね。ドラゴントゥース」 「……あぁ」 「あぁ、じゃない! よろしくでしょう!?」 「よろしく」 「あと名前呼びなさいよ」 「何故」 「またそんなこと言って!!」  洞窟の中で、ノワの声がひっきりなしに響いている。  不思議と、悪い気はしなかった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加