ドラゴントゥース

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  ***  翌朝、日の光が洞窟に差すと同時に出発することになった。  洞窟の外に向かって歩き出したドラゴントゥースの背中を見つめながら、ノワは思い出す。昨日、こっそりと垣間見た彼の記憶を。  骸骨とはいえ、おそらく元は人間だ。何を考えているか分からないので、魔法で記憶を読み取った。記憶喪失というのは嘘ではないらしい。  その記憶の中で、人間の男が屍に囲まれていた。甲冑と剣を真っ赤に染めて、ただ立っていた。  彼は、満面の笑みを浮かべていた。まるで、宝物を手にした子供のように。  淡々と喋り、まるで生気のないドラゴントゥースからは想像もつかないくらい、楽しそうだった。 (本当、一体何を考えているのかしら……)  正直、怖くないといえば嘘になる。というか、理解できない。  だけど、同時に確信した。この男なら、人間を躊躇なく殺してくれる。だから誘った。  復讐のためなら、手段は選ばない。これから始める旅も、人間を滅ぼすためのものだ。 (それなのに……何なの。この、胸の高鳴りは……っ)  怒りとも、人間を殺せる喜びとも違う。別の何かだった。しかも外の光が近くなるにつれて、その高ぶりはだんだんと大きくなる。  しかも、この感覚は初めてではない。 (……思い出した。これ、ママから外の世界の話を聞いてた時と同じだ)  もしかしたら、その時よりも激しいかもしれない。今にも心臓が口から飛び出しそうだ。  それは、随分と久しぶりの感覚だった。両親が殺されて以来、ノワの心には悲しみと憎しみしかなかった。  外に出るきっかけがなければ、一生思い出さなかっただろう。  だけど、ノワはもう知っている。自分は、世界の敵だということを。  そしてそれは、世界を支配しているのが人間だからということを。 (……パパ、ママ)  人間を滅ぼせば、もう両親のような犠牲もでない。そうすれば、優しかった両親も報われるはずだ。  そして、ノワも自由になれる。幼い頃に憧れた、外の世界で。 (もう、大丈夫よ)  ずっと、独りぼっちだった。両親を失って以来、ノワを殺そうとする人間を何とか追い払うだけの日々だけが続いた。永遠と思うほどに、長く。  だけど今は違う。今のノワには、ドラゴントゥースがいる。  自分を怖がらず、ただ話を聞いてくれた戦士の背中は、とても大きく見えた。 (私、絶対にこの夢を叶えるからね。二人のために。そして……私自身のために)  少女は改めて強く誓った。この戦士と共に、全ての人間を滅ぼすと。
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