変恋  へんれん

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「よぉ、テファン!お前むけのイイ仕事があるぞ」 酒場で飲んでたドヨンが声をかけてきた。 「3食寝床(しょくねどこ)つきで期限は長くなるかもしれないが上手くいけば短くなるし、 (らく)して(かね)が手にはいる」 体格のいいドヨンは熊の獣人で手の甲に真っ黒い毛を生やしその手が酒のジョッキを(かたむ)けごくごくと(のど)をならしプハーッと息をはきながら言った。 「へぇー?いい条件なのにどーしてお前が受けないんだ?」 と言いながらカウンターにいるドヨンの横の椅子(いす)に腰をかけて座ったテファンはスベスベの肌をもち一見(いっけん)すれば人間に見間違える容姿(ようし)をしている。 「(くや)しいことに受けれねぇんだよ!お前が受けないんなら他をあたるが?」 ドヨンは斡旋業者(あっせんぎょうしゃ)のようなこともやっていてテファンに仕事を回してくることも多く条件さえあえば引き受けたりしているのだが()たりをひけば楽でイイ仕事ハズレをひくと面倒(めんどう)で大変なめにあうことも… 「(くわ)しくきかせてくれ」と言うと店主(てんしゅ)に酒を注文するのだった。 テファンはフリーの(なん)でも()をやっている。見ためと違って荒っぽい仕事までこなすので重宝(ちょうほう)されているのだった。 ドヨンが持ちこんだ仕事内容(しごとないよう)を簡単に言うならこうだった 『人間のフリして密売人(みつばいにん)(つか)まえろ』 たしかにテファンの容姿なら問題ない仕事であるが… しかしいつ(あらわ)れるか分からないうえに(くに)支援(しえん)している施設(しせつ)というのがなぁ と気乗(きのり)りしない表情で肩肘(かたひじ)をつくポーズのテファンは視線(しせん)天井(てんじょう)にあげて思案(しあん)する。 テファンが捕まったところでどうとでもなるのだ最悪の場合は獣性が強くでてる足の一部をみせればいい。彼は自分が獣人であると証明する金属のIDタグにチェーンをつけて首からさげて自衛(じえい)していた。まぁ、どうにかなるかな… 「よし。引き受けた」とドヨンに承諾(しょうだく)したのだった。 ほろ()いのいい気分で酒場から出たとこでドン!と何かにぶつかった。 「ああ、すまない」とフードをかぶった男はそう言って立ちさろうとしたのだけれどちょうど俺のIDタグの金具(かなぐ)にフードがひっかかったようではらりと後ろに落ちた 「っつ!!」男が(あわ)てたように動くからよけいにはずれない。 「ちょっと待て」と男の頭を押さえつけ(から)まりをほどいてたら 「何してやがる?」と(けん)のある声がしてテファンと男の間にはいり引き()がしたのは金髪(きんぱつ)(うみ)(にお)いがする男だった。 その金髪の青年の腰にはフードをかぶった子供がひっついていた。 「俺のタグがフードにひっかかっちまったようだ、すまない。」とテファンはタグのチェーンを()って見せた。 「そうか。」と一言だけいうと金髪の青年は男にフードを(かぶ)せなおすと足早(あしばや)にさっていった。 (わけ)アリって感じだな。金髪の男が細身の剣に手をかけてたからマズイなぁ思ったが簡単に引き下がってくれてよかった。 それよりフード男は見ためはおっさんが(みょう)な色気のようなものがあったし小さいフードのあの匂いもどこかで()いだきがするのだが…酒でよった頭では思い出せない。 自宅の風呂あがりにドヨンの仕事内容の密売人(みつばいにん)について考えていた。 絶滅危惧種特A 人間や準絶滅危惧種(じゅんぜつめつきぐしゅ)ウサギなどを捕獲してコレクターや(やみ)ブローカーに渡して金をもらう。 そういえば金糸雀(カナリア)の獣人も一時期(いちじき)だが声が綺麗(きれい)(うた)上手(うま)いとコレクターや売人(ばいにん)(ねら)われてた時期(じき)があった。 そしてあの金髪の青年も金糸雀の獣人であったなぁと思い出してそのまま寝てしまった。 テファンは施設の職員の話を聞いてこの依頼(いらい)(ことわ)らなかったことを心底後悔(しんそここうかい)していた。 この仕事(おお)ハズレかもしれないと… 職員との共同生活だなんてきーてねーぞ。 「ヒョンジュだ。売人を(つか)まえるまで一緒に生活をさせていただく。」と目つきの(するど)い獣人はきっちりしたスーツ姿で挨拶をしてきたので 「諸種(しょしゅ)のヨンだよろしくな。」とテファンは(まった)くの別人の名前をなのる。 テファンは仕事では偽名(ぎめい)を使うことにしてる。テファンのような仕事は敵をつくりやすいし身元がバレるのはなるべくさけたいのだ。 諸種(しょしゅ)はいろんな種族が混ざりすぎてわからないという意味だ。他にも他種(たしゅ)・キメラ種など呼び方はさまざまだが意味は諸種と同じだ。 簡単な挨拶をすませて施設内をヒョンジュに案内してもらうことにするのだが 「これは…?」とヒョンジュが言うのも無理はない。 テファンは持ってきていた車椅子(くるまいす)にのり自分の手荷物(てにもつ)を抱えると「ヒョンジュこれを押して案内してくれ」と(たの)んだのだった。 「これも売人を捕まえるための(さく)さ」とテファンが言えばそれ以上何も言わなかった。 ざっと見た限りではセキュリティもしっかりしているし生体リンクで健康状態や居場所も調べられる腕輪をテファンもはめている。 それでも施設から(さら)われるというのなら… 「今日はこのくらいにして残りは明日(あす)だ。部屋へ案内する」とヒョンジュは共同生活する部屋へ車椅子を押すのだった。 部屋の扉が閉まると同時にテファンは自分の足で歩きベッドに寝転(ねころ)んで自分ならどこを(ねら)うかを考えていたら顔に影がさした。 「風呂がわいたが先に入るか?」とヒョンジュが無表情に立っていて驚き思考(しこう)(みだ)された。  はぁ…、共同生活ってーのはプライバシーがないのが困るよな それにこの部屋ほとんど物がない簡素(かんそ)な部屋であった。 この部屋をみて施設の悪い噂が思いだされた。 行動を管理された生活とか施設に行くと(おり)にいれられるようなものだとか…もっともこれらは売人により故意(こい)に流されてるようである 「悪い(うわさ)のせいで施設にきたがらない人間も多い。現状もっといるであろう人間の保護に支障(ししょう)がでるほどだ。」とヒョンジュがいう。どうやら言葉にでてたらしい 「召喚などで呼ばれる者などはこの世界のことを知らないから売人の犠牲(ぎせい)になりやすい。なぜだか(あらわ)れるのは男の確立が高いようだがその法則(ほうそく)解明(かいめい)されていない……で風呂はどうするんだ?」 集中力がきれたので先に風呂を使わせてもらい出てきたテファンを見てヒョンジュが目をみはり驚いていた。 テファンは腰にタオルを巻いただけの状態で出てきたのだ。いや、でも男同士なら問題ないだろ?なぜ驚かいたのかがわからないが… それにテファンの(はだか)で寝る習慣(しゅうかん)はもはやそのスタイルでしか眠れなくなっていたのだ。  ヒョンジュも風呂に入りキッチリとパジャマを着てそのままもう1つあるベッドに横になるとすぐに寝たようだった この獣人まるで正反対(せいはんたい)性格(せいかく)である。 (するど)眼差(まなざ)しはテファンの苦い記憶(きおく)を刺激する。 昔つき合ってた獣人の体格や目つきなどが()ているのだった。 テファンは厄介(やっかい)な感情を持つ前にさっさと仕事を終わらせてズラかろうと思うのだった。
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