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人魚症…別名、鱗病。
それは鱗をもたない獣人の肌がひび割れ鱗状に見えることからそう呼ばれ悪化や進行すると結晶化してその部分が動かせなくなる奇病らしい。
周知されてないのは発症する者が非常に少なく、治療も特効薬も不明の難病だと医者は言っていた―…
俺がその珍しい病気を発症すると恋人は離れていき友人は疎遠になったし移るような伝染病ではないと言ったところでボロボロな肌や結晶化した関節を見せられればその変貌が恐ろしくもあり嫌悪するのも理解はできた。
逆の立場なら俺も相手を切り捨てるタイプだからだ。
病気になる前の俺は只々 傲慢だった。
つき合う相手には困らなかったし友達は選ぶのが当たり前で容姿に自信がある獣人たちばかりだったから俺の醜くなっていく姿は許容できなかったってわけだ。
俺でさえ受け入れられず悪化する症状に苛立ちながらも情報を集めて治せる医者を探し歩いたけど膝にも結晶化がでて歩くのが難しくなり鱗を隠して車椅子で出かけるのも嫌になって部屋にこもるようになった。
この家に鏡は1枚もない。
もともと無かったわけではなく俺が全てを割って壊したのだ。
醜くなっていく自分を見ていたくなかったから…
鱗が増えるたびに心まで蝕まれていく気がして
どんなに足掻いても鱗から逃れるすべがなく動かなくなっていく体に疲弊しきっていた。
日常生活もままならない俺を世話してくれる姉は負けず嫌いで俺の治療法を探し続けてくれたようで―…
「やらずに後悔するよりやりつくして後悔しないほうがいいでしょ?治療してるって言うなら行ってみる価値はあると思うわ。」
たしかに自称だとしても認知度の低い人魚症を治療をしてると宣伝する意味がないが・・・
今の俺に姉を止めるすべもなく連れていかれた場所で一番会いたくない獣人と20年ぶりの対面を余儀なくさせられたのだった。
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