2.人魚症

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「彼が人魚症を発症した弟さん? 進行ぐあいを知りたいから1番はじめにでた部分を見せてもらえる?」 全身をすっぽりと(おお)う大きな布を頭からかぶった俺に気づいてない彼に言われて無言で曲がらなくなった右腕を持ち上げる。 その腕をとり丁寧に観察して 「あぁ、かなり進行して指の関節まで広がってるし痛みもあったろ? 我慢強(がまんづよ)いんだな」 と(いた)わる言葉を口にし目を細める姿は見知ったもので関係のない胸が苦しくなる。 「これだと通院は大変ですね。よければ症状が軽くなるまで(あず)かりましょうか?」 「まぁ!助かるわぁ。けど、いいんですの?」 自宅からの距離がかなりあり車椅子の俺を連れて往復するのはかなり大変だし通院はさけたいのだろう。 姉がそう言うのも理解はできるが感情は複雑だ。 「人魚症に限らず重症化した患者の受け入れはしてますよ、本人が嫌でなければですが・・・」 頭の布を落として俺の顔を見ても同じセリフが言えるのだろうか? 嫌かどうかで言えば嫌だ…だが、 「あら、治療のためなら何でもするわよねぇ?多少の不便は我慢なさい。」 俺に選択肢は無いのだろう。 「いいのか?」と小声で尋ねる彼に無言で頷いて同意すると姉は4日後にまた様子を見にくると言って帰っていった。 彼が飲み物を2つ用意しテーブルに置くと世間話のような自然さで 「20年………ぶりか?」と言い 「――ッ!……気づいてたのか…」 思わず見上げると頭の布は後ろに落ちて左側の皮膚が結晶化してる顔を彼に見られることになった。 「何で気づかれないと思たんだよ、まぁ患者となって再会するとは予想外だけどな。」 結晶化してる部分を観察するように見ている彼の目に嫌悪はなくまっすぐ見つめるのはあいかわらずっだった。 「で、どうする? 人魚症の治療はかなり特殊でハードルが高いけどお前、治療のためならどこまでできる?」 どんな治療でも受ける覚悟をしてきたのにその決意を(くじ)く彼の話す想定外の治療法に俺は答えるまでにかなりの時間が必要だった
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