2.人魚症

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「これがウミウシの再生能力を研究して作った軟膏(なんこう)。細胞の新陳代謝を(うなが)(うるお)いや保湿(ほしつ)にすぐれた角質ケアもできる(ぬり)り薬」 やはり人魚症の特効薬は無いらしく症状の軽減や進行を遅らせることしかできないらしい 「で、こっちが治療用に改良した人工(じんこう)ウミウシたち。結晶化した部分を分泌液(ぶんぴつえき)(やわ)らかくしていくわけだが、分泌液で体が汚れるし体を()う不快感や気持ち悪さを我慢してもらうことになる」 ウミウシ…浅い海の海底に生息し貝が退化した裸鰓類(らさいるい)。分類は軟体動物門腹足綱だったか? 連れてこられた場所には発育(はついく)のよい手の(こぶし)サイズとなった人工ウミウシたちが飼育され()んだ水をカラフルに(いろど)っている 危険ではないと頭で分かっていてもハッキリ言ってこんなウミウシの()れの中へ入水(にゅうすい)するのは毛が逆立(さかだ)つほど嫌だ 「……無理なら止めてもいいんだぞ?」 心を読んだかのような言葉に反発心が強くなり答えることなく車椅子(くるまいす)に座ったまま上半身の服を片腕で脱ぎズボンに手をかけると何も言わずにサポートをしてくれた。 結晶化が広がる足は顔をしかめるありさまで動きも(にぶ)いしズボンを着脱は大変だから助かるのだがこんな足を自分で見るのも見られてる事も不快だし補助なしでは脱げないという状況が嫌でお礼の言葉を言いそこねた 水の温度は冷たすぎず足を入れるとウミウシたちがノロノロと逃げていくので踏むこともなく足を()ばして肩まで水につかりウミウシが近寄ってくるのを待つ 「体を倒して頭をここへ嫌だろうけど顔にも1匹のせるからな?」 もの(すご)く嫌だが顔の左側は結晶化して目が開かなくなってるし治療を了承したのは俺なのだ ベチョリとのせられたウミウシを払い落したいのを我慢して足先や腹まわりがゾワゾワするのは体を這うウミウシのせいだろう・・・ これを何時間も耐えつつ毎日やるのかー…と憂鬱(ゆううつ)になる俺の顔を食いいるように見ている奴がいる 「……何だよ?」 「いや、ウミウシの分泌液に汚れてるお前の顔は、、」 「見るのが嫌ならどっかいけよッ!」 最後まできかずに追い払うように言えば眉をしかめて俺を(にら)んで立ち去った 怒らせただろうか 顔のことを言われると過剰反応している自覚はあったが感情を抑えこむことができないし発症前の顔を知られてる相手だとなおさらダメだった。 そんなことを考えてボンヤリしてたせいでウミウシがとんでもない場所に にゅぷんっ、、と(もぐ)りこまれて 「ぬ、ぅあああぁ、ァ" !?」 体の内側をズリズリと撫でられ分泌液で()らされる未知の感覚に足先や両太ももの筋肉がビクッ、ビクンと反応して胸にいたウミウシが乳首にへばりつき 「~~~~ァ、あんッ、、」 同時に内側でもシコリに吸いつかれれば涙で視界はぼやけ自分の(くち)から出たとは思えないほどの甘ったるい声をあげ 股の間では病気が進行してからは使ってないモノが ガッチガチに硬くなり分泌液がまるで自分の下腹部から飛びだしたかのように胸や腹と足を汚していた 未知の感覚を脳が快感と錯覚しだしたころ頭上から 「 オレがちょっといない間にウミウシとそんなことをするなんて欲求不満?」 最悪のタイミングで戻ってきた。 しゃがみこんで逆さまに見える顔を声をだせる元気もなく(うつ)ろな目で見上げることしかできなかった。
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