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症状のタイプ
◆症状のタイプ
年が変わって、この世界は様変わりした。
正体不明の「雲」が大量に発生し始めたのだ。
雲は、空高い場所にあるものと思っていたのだが、この春、新種の雲が人の住む世界に現れるようになった。
雲と言っても、近くで見ると、その形状は「濃い霧」もしくは「煙」のようなものだ。
雲は、突如として町の中に現れる。
殺人雲・・当初はそう言われた。
雲は、突如として現れ、その中に、人を引き摺りこむ。
それを見た人によると、まるで、ホラー映画さながらだった、と説明する。
どんよりとした雲の多い日だった・・
最初の目撃者Aは、そう言った。
男Aは会社の人間同士、二人で歩いていた。
他に人通りのない住宅街の静かな道だった。
男二人は、保険の勧誘員でアポイントをとっていた家に向かう最中だった。
Aが説明するには、
目の前が霧に包まれたようになり、他の物が見えなくなった、ということだ。
もちろん、それが雲だと認識できるはずもない。
突如として湧いたような煙、あるいは濃霧としてしか認められなかった。
同時に、息苦しくなった。
Aは、連れ合いのBにそう言おうとしたが、近くにBはいなかった。
来た道を振り返ると、道が見えなかった。
道の代わりにモクモクとした雲のようなものが行く手を塞いでいた。
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