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ダイニングテーブルの上から封を切ってないエアメールを探し出した。消印を見ると、もう五年近く前に送られてきたものだということがわかった。
「なんで読まないの? 大事な先生がくれた手紙なのに」
「怖いんだ」
「なにが?」
「これを読んでしまったら、もう続きはないでしょ。……内容自体はたぶん、なんてことないってのはわかってるんだけど。いつか読むよ、うん。それは決めてる」
これを最後にしたくないという、思いが強すぎるのかもしれない。横地はその封筒をまた、山の中に差し込んだ。
「なーんか、どうでもいいことばっかり話しすぎちゃうな、ゆずちゃんといると」
「どうでもよくはないでしょ。勉強になった、本には書いてないことだと思うから」
優しい目をして頷き、横地は優月の頭の上にぽんとてのひらをのせた。
「ん? なに」見上げると、
「ゆずちゃんってやっぱり理系なんだな」横地は真顔で言った。
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