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勇気をもってノックしたのに、なぜこの状況になっているのだろうか?
目の前には本を片手に意味不明な発言をした男性と、目をキラキラさせながら私にお茶を淹れてくれる女性。
どちらも、凄く整った顔をしていた。
男性のほうは、少し癖の強い髪質をしているが、鼻も高くキリッとした瞳が印象的な人で、この人は確実に【イケメン】と呼ばれる分類である。
それと、女性はまっすぐな黒いセミロングの髪に夕日が映り、凄く艶のある感じがした。
それに、少しだけ下がった目尻と、小さな口の左端にポツリとあるホクロが、可愛らしい顔と大人な感じが混ざったような感覚がして、アンバランスだけど素敵な人であるのは間違いなかった。
「ねぇねぇ、名前は?」
「え、えっと、私は二戸 陽って言います」
「ヒナちゃんね。私は三年の矢島 告って言うの、そしてあの本を読んでいる変態は、同じ三年の一関 覚って言うんだけど、誰にでもあんな感じだから気にしないでね」
そう言ってニッコリと微笑んでくれる先輩に、ドキドキしてしまう。
最初から私のことを『ヒナちゃん』と呼んでくるあたり、気さくな人なのだろうか? 悪い気はしないし、ずっとヒナと呼ばれてきたので、違和感はない。
「それで、もしかして、恋研に興味があって来たのかな?」
満面の笑みで近づいてくる。 グッと顔が迫ると、少しだけ桃の香りが漂ってくる。
「は、はい、少し興味がありまして」
今までの勢いに戸惑う場面はあったけれど、自分を変えるために今日は来たのだから、このまま引き下がるわけにはいかない!
ちょっと、いや、かなり不安要素しか漂っていないが、矢島先輩はまともそうに思えた。
「やったぁ! 良かった。 これで無くならなくてよくなるよ」
無くなる? 不安要素から不穏要素に切り替わる。
「あのね。本当は、この研究会、えっと、恋愛研究会って言うんだけど、私と覚が立ち上げた研究会なの、でもね。一年のときから活動をしているだけど、今の今まで誰も入りたがらなくて」
あぁ、なんとなくわかる気がする。
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