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朽ち果てた聖堂に名も無き騎士が、床に突き刺さった剣の前に片膝を付いている。頭を垂れ、動くことのない騎士は石像のようである。
騎士が忠誠を尽くす剣は既に錆び、刃に彫られた文字すら読めなくなっている。
遥か頭上の方で鐘が鳴る。
それを合図に聖堂全体が激しく揺れ動く。
動かなかった騎士が頭を上げると王が膝を折り曲げ、見つめている。
人とは思えぬ巨体を持つ王は輝きを失った王冠を被り、闇のベールに覆われた顔を近づけさせる。
異形の王。
王は美しい装飾が施された銀のプレート付いたグローブを嵌めている。人差し指程度しかないその剣に指先を伸ばし、触れる。
あらゆる時空が歪み、闇が胎動する。
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