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想いを伝え合って、幸晴が僕の震えるモノを口に含み、僕も幸晴の硬くそそり立つモノを咥えた。
その後に、幸晴がお互いのモノを大きな手で握りしめて、激しく動かした。
口を吸われながら下は幸晴の硬いモノと一緒に扱かれて、僕は、あっという間に欲を吐き出した。
少し遅れて幸晴も熱い飛沫を飛ばした。
幸晴の胸に顔を伏せて、熱くなった顔を隠す。幸晴の身体の温かさが気持ちいい。
幸晴の首元に漂う匂いが好きだ。
ずっと、この温かさに触れていたい。匂いを感じていたい。
そして願わくば一つになって、幸晴と夫婦になりたい。
だけど今は駄目だ。今一つになってしまうと、幸晴が溶けて消えてしまう。
そんなの、僕は耐えられない。
だから、待ってて。どうすれば良いのか見つけて戻ってくるから。それまで、僕を待ってて。
僕は、幸晴に触れた幸せと心地よい疲れで、すぐに瞼を落とした。
翌朝、外が薄暗い時間に目を覚ました。
僕を抱きしめる幸晴を見上げると、静かな寝息を立ててよく眠っている。
僕は、そっと幸晴の腕から抜けて、薄闇の中で幸晴の顔を見つめた。
しばらく幸晴の顔を見ることが出来ない。
だから、目に焼き付けておかなきゃ。
幸晴と初めて離れるから、不安で寂しくて仕方がない。
でも、幸晴と永い時を過ごすための、少しの別れなんだ。
「幸晴…ごめんね。きっと怒るよね。怒って、待っててくれないかもしれないけど、僕は必ず戻ってくるから。幸晴と夫婦になるために…。ずっと一緒にいられるように…」
息を吐き出すように小さく小さく囁いて、幸晴の形のいい唇に、そっと口づける。
そして、物音を立てないように土間に降りると、道具類の後ろに隠しておいた包みを取り出して家を出た。
山道を下っているうちに、空が白み始めた。
残暑が終わり秋が始まってるようで、空気が澄んで冷たい。
ーーこれから雪に閉ざされる季節が来る。でも、幸晴は大丈夫だ。だって、雪の妖だもの。この冬の間に澄晴さんに会って、春には戻って来たい。
そう考えながら、少し足を早める。
幸晴は、涼しくなるほど朝が早い。
よく眠っていたから大丈夫だと思うけど、急がなきゃ。
山道を降りると、走って進み境内に飛び込んだ。
「走ると危ないぞ。まだ朝の早い時刻じゃ。そんなに慌てんでもええ」
境内の真ん中で、すでに日現さんが待っていた。
「日現さん…、おはようございます。遅かったですか?」
「大丈夫じゃ。でものんびりはしておれんの。早くここを離れんと、幸晴がものすごい勢いで追いかけてきそうじゃ」
「…そうですね。では行きましょう。日現さん、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
日現さんと並んで門を潜ろうとしたその時、後ろから「りつ!」と呼ぶ声がした。
境内を振り返ると、るりと月心さんが、僕に向かって大きく手を振っている。
「りつ!気をつけてねっ!絶対に戻って来てっ!」
「うんっ!るりも元気でっ!月心さんと仲良くねっ」
僕も二人に手を振り返して、大きな声を上げる。
「行くぞ」と先を歩き出した日現さんの後に続きながら、僕は溢れ出る涙を袖で拭った。
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