ゆきやなぎ

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雪柳の花言葉は『愛らしさ』『懸命』など。 母さんが死んじゃってから僕はずっと一人で生きてきた。 いや、ユキがいてくれるから一人と一匹だな。 母さんは僕に「あんたがいてくれて幸せだったよ」って、 それからユキに「ユキ、健太をよろしくね」って、逝ってしまった。 それからいろんなことがあったけど、ユキがいてくれたおかげでなんとか乗り越えてこれた。 母さんにとっての僕の存在もこんな感じだったのかな。 彼女にふられて激烈に落ち込んでた夜、ユキが袖口をひぱって僕を誘う。 「わかったよ」と後をついていくとユキを拾った公園にでた。 雪柳が満開だった。 そう、あの夜も雪柳が満開でユキはその根元の段ボールで震えていたっけ。 ユキは「オワーオワワー」と歌うように喉を鳴らし始めた。 すると 雪柳がゆれて愛らしい声が聞こえてきた。 おお!雪柳とユキが合唱してるよ♪ 懸命に僕を元気づけようとしてくれている。 そこにもうひとつ重なって聞こえてきた歌声… 母さん! 優しい歌声にゆらゆらと揺られながら 僕の中から哀しみが溶けていく。 ありがとう。
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