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玲香が見つめる視線の先には、左手で手招きし続けるデフォルメされた招き猫のアイコンが表示されていて、そのアイコンの横には『制服居酒屋八百万』と店の名前らしき文字が書いてあった。
(制服居酒屋はっぴゃくまん……じゃなくて八百万か。変な名前……いやいやそこじゃなくて)
ふるふると首を振りつつ、玲香は先ほどちらりと見えた『条件』と『給料』の項目へと目を落とす。
(条件、お酒が飲める若い女性。給料……じ、時給1万円? ……いや、いやいやいや。怪しすぎるでしょ)
ないないと手を振りつつ、苦笑気味に笑う玲香。
(誰がこんな露骨に怪しいお店受けるのよ)
自分が好きな某裁判ゲームのキャラクターのように、シニカルな笑みと共に肩を竦めて首を振りながらも、目は求人ページの紹介文を追ってしまう。
(土日祝日休みで、賄いあり。勤務時間は夕方6時から最長で朝4時まで。昇給、昇進あり。研修期間2週間。初心者歓迎、か……。聞こえのいい文句が並んでるけど、これ、お水の仕事だよね……。いくらなんでも、流石にちょっと……。でも、ここ以外ないし、貯金ももう少ないし……)
生活のため切実にお金は欲しいが、得体のしれない水商売には手を出し辛い。
自分の中で9割地雷だと確信しつつも、どん底で見つけたチャンスを切り捨てることが出来ず、くよくよと迷い続ける玲香。
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