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暫しの間、かち合った互いの瞳が交わる。
瞬きも忘れたかのように、真っ直ぐこちらへと向けられる色素の薄いそれに、忍は思わず吸い込まれそうになる。
つられて徐々に互いのそれが、まるで溶け込むような錯覚を覚え始めた。
「……っ」
己にしては珍しく動揺を隠せず、忍は視線を逸らした。
どう考えても不自然なこの行為に、何か言ってきやしないかと横目で佳乃を窺ったが、彼女は特に気にする素振りも見せず、同じく視線を逸らした。
だが直ぐ様、はっとしたようにもう一度こちらへその瞳を向けると、僅かに色付いた
カーネーションの唇を開いた。
「どうして忍さんがここに……?」
こことはこのパーティー会場と、
ロサンゼルスのどちらを指しているのか。
_或いはその両方か。
何と答えるべきか分からず、考えあぐねる忍の視線は自然と、佳乃の身に付けている純白のワンピースへと下がっていく。
所々に光沢の見られる涼しげなそれは、肩口まで開いているか否かのデザインに合わせ、
布の切れ目から僅かながら筋の入った色白い鎖骨が覗いている。
「……」
その様から何となしに視線を逸らした忍だったが、ふと気付くと整えられた眉を寄せた彼女が頬を薄赤く染め、こちらを軽く睨み付けていた。
そんなものは何の迫力もなかったが、何故だか少々こそばゆく感じ、忍は喉を低く鳴らすと口元に右手の甲を当て咳払いを行い、己を取り繕った。
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