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__翌日
前夜、記念パーティーが行われた会場で、簡単に朝食を済ませると、忍は尊の部屋の扉を軽くノックした。
昨日の夜、佳乃との通話を終えた後、日本での片は着いたのかとメッセージを入れたのだが、返信がなかったのだ。
もしや、やはり抗争が勃発してしまっていたので、既にここを出て忙しなくしているのだろうか。
だがそんな忍の内心とは裏腹に、扉は存外早く開けられた。
「おはよう、兄貴」
そう、にかりといつもの人懐こい笑みを見せた尊に、忍は安堵しつつも、「マジックミラーでちゃんと確認してから開けろ」と彼の額を拳で軽く小突く。
「ごめんごめん。
だって昨日、兄貴にメッセージ返さずに寝ちゃったからさ」
部屋の奥へと進みながら、尊は困ったようにはにかんで、こちらを振り返り弁解した。
そして、
「大丈夫だよ。
抗争とか物騒なことは起こってなかった」
完全に、こちらが危惧していたことを読まれていたようだ。
「…………__」
一瞬にして、先程とはうってかわり真剣な面持ちに切り替わった彼に、暫し微かな驚きを覚え、呆気にとられていた忍だったが、気付けば軽く笑みを溢していた。
「ふ……」
_さすが……
だが当然、尊が己の微笑の訳を知るはずもなく、彼としては突然、珍しく笑みを見せた忍に戸惑いを隠せないようで、その間ずっと、「え?え?」と疑問符を繰り返していたが。
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