4.LA観光

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帰りの荷作りを行うべく、忍が尊の部屋を出た丁度その時のことだった。 「忍さん!」 鈴の音を鳴らしたような、聞き覚えのあるその声音に扉から顔を上げると、案の定、小走りでこちらへと駆け寄ってくる佳乃の姿があった。 ストレートに戻された黒髪が、胸元で緩く結ばれたライトブルーのカーディガンの肩口でさらりと揺れる。 「お嬢……?」 今やすっかり馴染んだその呼び名が、何故か疑問符と共に出たのは、きっと何処か新鮮に映る私服姿により、一瞬別人に見えたからだろう。 羽織られたカーディガンの下には、オフホワイトのロングタイトワンピースが身に付けられていて、昨晩よりカジュアルな印象を受ける。 最も、それをよく表していたのは足元の白のスニーカーだったが。 _……いや、それよりも…だ 忍は、いつの間にか彼女のその清楚過ぎず、かつラフ過ぎない、絶妙な合わせ方に関心を示していた己を慌てて我に返らせると、「おはよう」と口を開く。 「…どうしたんだ? 昨日言い忘れたことでも?」 すると、佳乃ははっとしたように素早く居住いを正すと、 「おはようございます」 と丁寧に会釈を寄越した。 「やっぱり、直接会ってお礼が言いたくて……。 でもお部屋にいらっしゃらないようだったので、もしかして、もうチェックアウトされてしまったのかと……」 そのためだけにわざわざ走ってきたのか…と、忍は半ば呆れ、半ば感嘆の小さな吐息をつく。 _だが…… 「よくここが分かったな……」 「偶然ですよ」 そうふわりと笑むと、その微かに赤みを帯びた頬に小さく笑窪(えくぼ)が浮かび上がった。
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