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花の名前は忘れた。
だけどこの花の意味は知っている。
「これやるよ」
君の顔も見ずに、その花を差し出した。
戸惑っているのか、なかなか受け取ってくれない。
なんだかじれったくて歯痒い。
彼女はそっと花を受け取ると何か言いかけようとした。だけど俺はそれを聞かずに背中を向けて走り出し、その場を去った。
全力で駆け抜ける。身体が熱い。息苦しい。それに足もダルくなってきた。
それでも少しでも遠くへ行きたくて脇目も振らず、走り続ける。
しばらくして俺はようやく歩みを止めた。心臓の鼓動が、呼吸する音が、芯に響いて煩い。こめかみ辺りが激しく脈打って、耳の奥がキンと痛む。
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