round 1×「リモコンの取り合い」

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round 1×「リモコンの取り合い」

 私はカメだ。 名前は佐藤カメ子。種類はリクガメ、メスの29歳。アラサーだ。  結婚はしていない。独り身だ。  その原因は私にはない(はず)。  出会いがないだけだ。婚活もしていないアラサーの決まりの文句かもしれないが、住環境上、本当に出会いがない。ペットショップでこの家の大黒柱に購入されてから、自分以外のリクガメには会ったことがない。  一生、独身かもしれない。  まあそれでも、単体で自由気ままに人生を謳歌している。 負け犬ならぬ、負けカメの強がりに聞こえるかもしれないが、本当に、これっぽっちも、ちーっとも寂しくない。  ほんとのほんとだぞ。  ただ………。 ただ、寂しくはないが、家族が寝静まったリビングに1匹で過ごしている時は静かすぎてなんだかしゅんとしてしまう。 少し、ほーんの少しだけ、しょんぼり。そして、隣に自分と同じカメが居たら夜も楽しいかな? と、ほーんの少しだけ思う。 これが寂しいって気持ち?  え、そんなバカな。 この話ではツッコミは受け付けておりません。  独身だが、私には家族がいる。私以外は人間だ。  家族は上から順に、裏番長の母親、大黒柱の父親、長女の私、長男のハジメ、次男のジロー、三男のサブロー。  ハジメは表情の変化が乏しくクール。しかし、相手に譲る事を知らない俺様。高校1年。  ジローは、運動神経は抜群であるが、声がでかい、足音もでかい、態度もでかい。全てが騒がしい。中学三年。  サブローは一見すると大人しい癒し系のんびりだが、2人の兄を出し抜く時もあり、一番ズル賢い。中学一年。  これだけ個性的な性格の家族が揃うと、何かと揉め事が多い。  揉め事の主な出来事は取り合いだ。歳の近い3兄弟が1つの物を取り合うのは日常茶飯事であった。
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