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で、前置きが長くなったが、今日は本当に気分がいい。
すいすいリビングを歩くと、見慣れない物が目に入った。葉が生い茂った観葉植物。
一週間前に散歩した時にはこんな物はなかったはずだ。みよ子が爆買いついでに、買ったのだろうか。
何にせよ、魅力的な緑色をしている。植木鉢に前足を伸ばすと、何とか葉の部分に口が届きそうだ。
よし、一口食べてみよう。
最近、人参、ジャガイモばかりで、緑黄色野菜に少し飢えていたのだ。
よしよし、一口ぐらいなら大丈夫だろう。
私は首を長〜くして、葉っぱに食らいついた。
ビリリリリィ、と破ける音がした。
むしゃむしゃむしゃ、味がしない。
何だ、中々、噛み切れないぞ。
「あ」
「ああああっ!」
「あーあ」
わっ!
3兄弟の声がして、私は観葉植物に伸ばしていた前足を引っ込めてその勢いでクルッとひっくり返った。
ごっくん!
口に入っていたものを飲み込んだ。
な、何だか、く、苦しいぞ。
自分の体が逆さになり、手足をキュッと甲羅に引っ込めた。
「カメ子っ! これ食べたのか?」
ジローの声がうるさく響いた。
な、何だっ! く、く、苦しい。
「これフェイクだろ?」
「こんなの食べたら、死んじゃうんじゃないの?」
「それはダメだっ! 早く口から出さないと」
「お父さん、カメ子が大変だよぉ〜」
「頭引っ込めてるぞっ! 口から葉っぱが取れないぞっ!」
いつも取り合いをしている3兄弟が、協力して私を心配しているのは微笑ましいが、く、く、苦しい。
「動物病院に行くぞ!」
大黒柱の声を聞いたが最後、私は意識を失った。
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