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ま、眩しい。ここはどこだ?
私はカメだ。佐藤カメ子。
それは分かる。どこだ?
「良かった、偽物の葉っぱは口から取れたよ」
目を開けると私は硬い台の上に居た。どうやら一命を取り留めらしい。
白衣を着た男がニコニコしている。
その向こうに3兄弟が立っている。
「カメ子、良かったぁ。良かったよぉ」サブローが涙ぐみ、
「良かったぁ! カメ子ぉ!」ジローが大きい声を出し、
「あんなの食べたらダメだからな」ハジメが私の甲羅を押した。
3人は良く似た顔で、目にはうっすらと涙を浮かべている。
私はペットショップで大黒柱に気に入られ、初めて佐藤家に来た時を思い出した。
『このカメは3人のカメだから。喧嘩せずに3人で世話をしなさい』
大黒柱は3兄弟にそう言って、私に今の城を準備してくれた。
『まず名前だっ! 名前を決めようっ!』
いつものようにジローが大声を上げた。
『そうだな、名前だな』ハジメが言った。
『みんなで考えようよ。僕も考える〜』
3人はしばらく考えて、一斉に口を開いた。
『カメ子、はどう?』
『カメ子だっ!』
『カメ子にしようか』
3兄弟は手を取り合い、目を輝かせた。私の名前はその日からカメ子になったーーー。
弟の3人はいつもくだらない取り合いばかりしている。そんな3人をバカに出来ないほど、私はミスを犯し、うっかり死にかけてしまった。みんなは私をバカにせず、手を取り合って助けてくれた。
私は佐藤カメ子。自慢の名前だ。
「私はその佐藤家の一員で幸せだ」
やっぱりカメ語は家族に伝えることは出来ない。
残念、無念。ドンマイ、自分。
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