round 2×「トイレの取り合い」

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round 2×「トイレの取り合い」

 私はカメだ。 名前は佐藤カメ子。種類はリクガメ、メスの29歳。アラサーだ。 朝から人参を食べている、アラサーだ。  謎のウィルスが蔓延(まんえん)し、世界はその脅威に怯えているとニュースで聞いた。その影響を受けて、裏番長の母親、みよ子が人参を爆買いした。買いだめは良しとはされていないのにも関わらず、我が道を行き、その恩恵として、私は朝も昼も夜も人参を食べている。  よって、人参ループに陥っている。  長女として私は「買いだめをせず、冷静な判断を」と、助言をしてみたが、どこ吹く風であった。まぁ、カメ語が聞こえてないのだろう。  残念、無念。ドンマイ、自分。  この家の裏番長、みよ子は最強である。  今日は朝から「ジャガイモが安い、買いに行かねば」と、息巻いている。人間は大変である。私はカメなので買い物には行かなくて良い。 それはありがたいが、城の中で過ごす時間を持て余す事がある。ステイホームならぬステイゲージである。  つまらない。 そうぼやいていると、時々、私を大黒柱がゲージから出して散歩をさせてくれる。家の中だけではあるが、随分、気分転換になる。散歩はオススメだ。  今日は休日であるから、大黒柱が居るはずだ。外に出してくれるだろうか、とそわそわして階段を見上げる。  リビングにはみよ子しかおらず、静かな朝だ。
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