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「おれが1番っ!」
ジローの声が廊下に響いて扉が開く音がした。ジローが勝ったらしい。ここから見えないので分からないが大方そうだろう。
「くそ、いっつもジローにトイレは取られる」
「ジローにいちゃんから、足の速さとうるささ取ったら何も残らないよ」
「…サブロー、それは言い過ぎだろ」
2人がブツブツ言いながらリビングに入ってきて私を見た。
「おはよう、カメ子」
「おはよ、カメ子」
ハジメとサブローが私を見た。
交互に甲羅を押して、サブローが私の城をじーっと覗き込んだ。
「あ、カメ子、おっきなフンしてる。母さん、人参あげすぎじゃない?」
「えー? そんな事ないわよ」
「朝1番のトイレはカメ子だったな」
ハジメがそう言って私を見た。
し、し、し、失礼な!
姉の排泄物をジロジロと見るんじゃない!
「じゃあ、ジローがトイレから出てきたら、カメ子のゲージ掃除してもらうわ。あんたたち、今日、休みでしょ」
みよ子はそう言って、また私のゲージに人参を入れた。
ぐぬぬぬ、今日もまた人参ループか。
「あ〜スッキリしたっ! 」
ジローがトイレから出てきた瞬間、ハジメとサブローがトイレに走った。
「何? 何の話? おれがなんだって?」
「今日、ジロー休みでしょ。カメ子のゲージを掃除して」
「え〜?? おれだって、休みで、用事が、その、あ、あったよう、な…」
「何? 母さんの言うことが聞けないの? そう。それは大事な、大事な、大事な用事があるのね?」
みよ子の言葉にジローはしどろもどろになっている。ドンマイ、ジロー。
「返事が聞こえないんだけど?」
みよ子の圧がすごい。さすが裏番長。
「はひ」
ジローは私のゲージを見てため息をついた。
失敬な。姉の城を掃除できるなんてありがたいイベントだぞ。
round 2、勝者ジロー。でも本当は、みよ子の勝ち。
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